家@鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

食べ物、飲み物、ワンコ、鎌倉特に七里ガ浜地区(七里ガ浜東と七里ガ浜)の話と八ヶ岳西麓(特に長野県諏訪郡原村)の話が多い、極めて退屈なブログ

アンドリュー・ローソン(3)  引き続き西武園芸七里ガ浜店のサフィニアを横目で見ながらあれこれ考える

アンドリュー・ローソン氏の「COLOUR」にはこれも出て来る。日本が誇るサフィニアだ。南米原ペチュニアの系統でサントリーが開発したハイブリッド園芸種。ビジネス的に大成功。欧州大陸や英国でも大人気。



ローソン氏もこの古い著書で「The recently introduced Japanese Surfinia trailing petunias...」と紹介している。



話がそれるが、前回の記事で私はこう書いた:
・・・ステレオ・タイプな批判で「イングリッシュ・ガーデンなど参考にならん! 何でも海外の真似をして、外国かぶれが!」という人がいるが、実際はそうでもない。 普通のお宅の庭づくりに参考にならないという点では、竜安寺の庭などもっと参考にならない。なんでも真似し易いところ、採用しやすいところ、似合うところ、好きなところだけを抽出して自分のものとして利用すれば良いだけのことだ。日本製のスーツやカレー・ライスと同じだ。あれらだって発祥国の人々から見たら、ちゃんちゃらおかしいことは一杯あるが、それなりに理由があって日本のものに形を変え、流行り、独自に発展し・・・

こんな具合に、我々日本人の中には、同じ日本人で外国の文化に触れる機会の多い人のことを「外国かぶれ」という批判をする人が結構いるが、日本の外から巨視的に見れば、批判している本人も含め日本全体がなんとも中途半端でヘンテコリンな「かぶれ国」に見えるかもしれない。


<<西武園芸七里ガ浜店店頭。サントリーサフィニアを各種販売中>>

一方で、恐ろしくコスモポリタンな日本人も帰国子女を中心に多数存在し始めていて、彼らの中には「日本対外国」という概念、図式をもはや強くは持たない人も多い。あくまで「日本人」であることを捨てず文化的にも日本人であり続けるのだが、彼らにとっては学校選びも住むところも働く場所も友人も言語も、生活全体において、日本は数多い選択肢のひとつでしかなくなっている。欧州小国にしばしば見られるような行動様式だ。「外国かぶれ」という言葉、感覚自体が彼らにはとても意外感があるというか、普段意識しないものだろう。彼らにとって数多くの選択肢のひとつに過ぎない日本なのだから、「日本対外国」という概念でものを考えるほど、日本が大きい存在ではすでになくなってしまっているのだろう。

話を戻す。実は、日本における様々な外国の真似ごとなんて比較にならないほど、歴史的に英国人は貪欲に海外のモノを自国に持ち帰った。それは大英博物館のミイラやツタンカーメン像に限らない。植物だってスゴイ。とにかく採取して所蔵し、記録するということにかけてはとにかく秀でている。写真、あるいはその手段がない場合は細密な絵で記録も行われた。かのダーウィンも精密な動植物画を描くのがとても上手だ。



ローソン氏の著書「COLOUR」にも日本のヤツデが見られる。上の画像の左上の黄色い破線で囲んだ部分がそれだ。文章では「・・・Shiny seven-fingered Fatsia Japonica・・・」と紹介している。ヤツデは漢字では「八つ手」なのだろうが、葉はたいてい7つ、あるいは9つに割れる。ローソン氏も「7つに割れて輝くFatsia Japonica」と紹介しているわけだ。確かに肉厚で葉は光沢があり「shiny」だ。この学名の「Fatsia」という言葉は日本語の「ハチ」あるいは「ハツ」から来ているらしい。その日本語の意味を知ったらローソン氏も「日本人は矛盾している」と思うかもしれない。だって「ヤツデ」の葉は8つに割れないのだから。日本の「八」には「沢山」の意味もあるから良いのだけれど、8つには絶対割れないヤツデというのもちょっと落ち着きが悪いネーミングであるなあ。

彼らの諸外国への関心は強い。植物についてもそうだ。日本のヤツデも彼らにはエキゾチックに見えることだろう。有名なキュー・ガーデンなど、世界の植物を集合させた庭園と言える。しかも創立は260年ほど前のことだ。毎年ロンドン交通局の地下鉄は美しいポスターを作製するが、これは1929年のもの。キュー・ガーデンは格好の題材になる。



次は1927年、同じく交通局の地下鉄のポスター。日本のサクラがキュー・ガーデンで咲いていることを告げるポスターだ。



斯様に・・・最新の技術で作出されたサフィニアも伝統的なヤツデもサクラも、彼の地の「ガーデン」で活用されている。日本の照葉樹林に自生するヤツデやアオキのような分厚く光沢があり大きな葉を持つ植物を、彼の地の冷涼な気候のもとでどう使うかということを大真面目に考えているのである。「かぶれ」もへったくれもないのだ。

我々もどんどん利用すればいい。品種もスタイルも。合法な範囲で、かつ生態系を考えながら。園芸用として売られる花についていうと、かなり多くがすでに外来種ではあるが。

こんなのもある。キュー・ガーデンのオンライン・ショップで今も買える、園芸用革手袋。



さて、我が家の小さな庭の目土の補給作業を続けますか。買っても買っても、足りなくなる目土。これもまた西武園芸七里ガ浜店で購入。



西武園芸七里ガ浜店
所在地: 七里ガ浜東4-1-2(西友七里ガ浜店の隣)
電話: 0467-32-1382

<続く>